103Ⅴ. 共用試験の現状と今後1.医学生共用試験 (1)臨床実習前のCBTとOSCE臨床実習前のCBTとOSCEは,医学生が診療現場で医療チームの一員となって医行為を行う実習を開始する前に,それを許容できる十分な能力を備えているかを測定し,合否を全国統一基準で判定しようとする試験です。これに合格すれば臨床実習で医行為をすることが許容されますし,医師国家試験の受験資格も与えられます。 この目的のために,それまで全国の医学部・医科大学が自律的に行っていた試験が,公的な試験となり,その実施機関として当機構が国から指定され,令和5年度から公的試験として実施されています。 CBTについては,ほぼ公的化以前どおり320問題で,その到達基準設定は,Bookmark法により定めた全国統一基準が適用されています。 OSCEについては,わが国の医学部・医科大学の実情に鑑み,公的試験としては8課題で実施していますが,自主的に10課題を実施した大学もあります。OSCEの到達基準設定は修正Angoff法により定めた全国統一基準が適用されています。OSCEの評価者及び模擬患者養成は当機構が継続的に実施し,当機構が認定した人材で試験を実施することで試験の信頼性を高めています。 臨床実習前共用試験(CBT・OSCE)の追試験及び再試験は,国家試験とは異なり,在学生が受験する試験であることから,学校感染症等で受験できなかった場合は追試験が,また,到達基準に達しなかった場合は1回のみ再試験の受験機会が与えられます。 さらに,何らかの理由で,受験に際しての支援が必要な場合は,事前に本人や大学と協議して適切な支援策を講じています。また,受験者が自分の試験結果について異議を唱えた場合で,大学に申し出て適切と判断された場合は,点数の見直しや,動画での確認を行う体制があります。 (2)臨床実習後のOSCE臨床実習後OSCEは,医学部を卒業させてよいか,臨床研修を開始できるだけの能力を修得できているかを確認する試験です。これは未だ公的試験ではありません。当機構で作成した課題3課題と各大学が作成した3課題の合計6課題による自律的な実施が勧められ,その合否判定は実施大学に委ねられています。 医師国家試験では,知識と技能を評価すると定められていますが,現行の医師国家試験では知識の修得度の評価に偏向していますから,医学部卒業時の技能や態度を評価する臨床実習後OSCEは,すでに公的化されている臨床実習前OSCEの状況をみて,今後,公的化が検討されることになるでしょう。
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