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理事長挨拶

 理事長 栗原 敏から皆さまへ

 医療系大学間共用試験実施評価機構の理事長を務めている学校法人慈恵大学理事長の栗原敏です。日頃、医学生、歯学生の教育にご理解とご協力を賜り心から厚く御礼申し上げます。

 医師・歯科医師になるためには、“医師・歯科医師として必要な知識を有していると共に、技能・態度を修得していること”が求められます。知識、技能・態度を卒前・卒後の教育課程で、どのように学ぶことが適切かなどに関してはこれまで長きにわたり検討されてきており、“医学教育の改善に関する調査研究協力者会議の最終まとめ”(昭和62年:文部省) などに報告されています。

 その後も“21世紀医学・医療者懇談会報告 第1次~第4次”(平成8年~11年:文部省)において、モデル・コア・カリキュラムの作成や、一定の水準を設けた全国共通の評価システムの必要性などが指摘され、これらを踏まえて、大学間の共用試験システムの構築に関する議論が行われ、臨床実習開始前に学生の能力を評価するために、共同で質の高い総合試験問題を作成して試験することが検討され、“医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議最終報告”(平成19年:厚生労働省) に報告されています。学生の能力を適切に評価することは、社会に対して医学・歯学教育の質を示し、医師・歯科医師育成に対する国民の理解を得るためにも必要かつ有効と考えられます。

 このような議論が進む中、平成14年4月に共用試験実施機構が創設され、ついで平成17年には社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構(以下、機構)が設立認可され、第1回共用試験が実施されました。機構は平成26年に内閣府認定の公益社団法人に移行し現在に至っております。令和4年3月現在、医学系・歯学系111大学(82国公私立医科大学・医学部等、29歯科大学・大学歯学部)が正会員として参加しております。

 機構では、コンピュータを使って多肢選択問題を出題し解答させて知識を客観的に評価するComputer Based Testing(CBT)を導入し、出題時の難易度調整や試験実施後の問題の評価、試験の評価、合格ラインの妥当性の検討に項目反応理論(IRT (Item Response Theory))を適用してきました。このIRTの適用は機構の研究部が主体となって行い、テストの専門家からも評価され、他の試験のモデルとなってきました。

 また、医師・歯科医師には知識と共に相応の技能と態度が求められるので、学生の能力を評価するために、知識の評価に加えて実技試験も導入することになりました。ベッドサイドに行って実際に患者さんを診て学ぶこと(bedside learning)は、臨床教育上、極めて重要であり、教育効果が高いことが広く認められています。しかし、患者さんのところに行って医師・歯科医師の指導監督の下で実習を行う診療参加型臨床実習を行うには、学生が相応の知識と技能・態度を修得していることが求められます。このため、学生の臨床能力を客観的に評価することが必要になります。客観的臨床能力試験は、Objective Structured Clinical Examination(OSCE)と呼称され、診療参加型臨床実習前に行う臨床能力試験は、Pre-Clinical Clerkship Objective Structured Clinical Examination(Pre-CC OSCE)、臨床実習後の臨床技能試験は、医学系ではPost-Clinical Clerkship Objective Structured Clinical Examination(Post-CC OSCE)、歯学系ではPost-Clinical Clerkship Performance Examination(Post-CC PX)と呼ばれています。Post-CC OSCE・PXは診療参加型臨床実習の学修効果を評価し、卒後の臨床研修を行うのに相応しい臨床能力を修得しているか否かを判断して、卒前教育から卒後教育への橋渡しをする役割があります。Post-CC OSCE・PXの改善・充実は、CBTの改善と共に、医師・歯科医師国家試験の在り方を検討する上でも極めて重要です。

 診療参加型臨床実習を行うにあたり、患者さんを対象とした学生の医行為については、医師法に抵触するという意見があり、指導者の下で、侵襲性の低い一定の技能については実施可能であるという共通認識の下で実習が行われてきました。しかし、医師でない医学生が医行為を行うことは医師法に抵触するので “違法性の阻却”が、全国医学部長病院長会議などで問題になりました。医学生が行うことが可能な医行為に関しては、“臨床実習検討委員会最終報告(前川レポート)”(平成3年:厚生省)に取りまとめられ、文部省高等教育局へ通知されました。その後、“医学部の臨床実習において実施可能な医行為の研究(門田レポート)”(平成30年:厚生労働省)が発表され、これらを参考にして、指導者の監督の下で診療参加型臨床実習が行われてきたのであります。

 令和3年5月、医師法の一部が改正され、医師法第17条“医師でなければ医業をなしてはならない”の第二項に“大学において医学を専攻する学生であって、共用試験に合格した者は、前条の規定に関わらず、当該大学が行う臨床実習において、医師の指導監督の下に、医師として具有すべき知識及び技能の習得のために医業をすることができる”が追加され、具体的には、令和5年4月から改正医師法が施行され、令和5年度からの新共用試験に合格した医学生は、診療参加型臨床実習において、監督者の指導の下で医業を行うことができるようになります(但し、処方箋の発行はできません)。また、令和7年度からの医師国家試験の受験要件に新共用試験の合格が加わることとなりました。歯学生についても医学生共用試験に1年遅れて同様の改正法が施行されることになっています。

 共用試験は多くの医科大学・医学部、歯科大学・歯学部の関係者のご協力とご尽力によって実施されており、感謝しております。機構では国民から信頼される医師や歯科医師を育成するために、透明性、公平性、信頼性を確保し、説明責任を果たすことができる試験の実施を目指して参りますので、会員大学の一層のご理解とご支援をお願いいたします。

 共用試験の公的化に伴い、機構の業務量は著しく増えました。機構の体制を見直し、業務の改善を図り、今後とも皆様に対して適切な情報の発信と対応に努めて参ります。

 医師・歯科医師を目指す皆さんは、日々、目標に向かって研鑽されていることと思います。皆さんが医師・歯科医師になるためには、必要な知識とともに、相応の技能・態度が求められます。このたび、医師法・歯科医師法が改正され(2021年5月)、医学生・歯学生が、指導者の下で、患者さんの協力を得て医行為ができるようになりました。但し、診療参加型臨床実習を行う前に、知識と技能・態度の試験(診療参加型臨床実習前共用試験)に合格することが求められます。この法改正の意図をよく理解し、共用試験で試されるという消極的な気持ちではなく、自分の到達度を知るという積極的な気持ちで共用試験を活用して、日々、研鑽し、国民から信頼される医師・歯科医師になられることを心より願っております。