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業務執行理事挨拶

副理事長  江藤 一洋click

 医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長の江藤一洋です。私は機構設立当初から係わりがあることから、「共用試験実施評価機構ができるまで」について歯学教育に関することを中心に説明します。

 まず、モデル・コア・カリキュラム(以下コア・カリ)と共用試験ができる前の20世紀後半、①将来の歯科医師需給に関する検討委員会最終意見(厚生省1986年7月)、②歯学教育の改善に関する調査研究協力者会議最終まとめ(文部省1987年9月)など歯科医師養成の在り方に関する提言・答申が出されていたが、実際のカリキュラムの改革とそれに連動した評価システムの導入までにはいたらなかった。

 改革の始まりは、文部省に設置された21世紀医学・医療懇談会の第4次報告(1999年4月)において「臨床実習に臨む学生の能力・適正について、全国的に一定水準を確保するとともに、学生の学習意欲を喚起する観点から、共通の評価システムを作ることを検討すべきである」との提言からとなる。この提言の実行部隊として、医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議が翌2000年3月に設置され、その下にコア・カリを作成する歯学教育プログラム調査研究会、また共用試験の立ち上げを担う学生評価のための共用試験システムに関する研究班がおかれた。

 コア・カリの作成については、その目的を「歯学研究・歯科医療分野の進歩動向と社会的ニーズなどを踏まえた学部段階での歯学教育における最小限の共通的なコア・カリキュラムを作成する」こととした。背景として、国家試験の出題基準や各講座が独自に作ったものが実質的カリキュラムになっており、学問領域の進展に伴い知識量が増大していたため、学ぶ側の立場に立って整理統合する必要があった。最小限の共通的なコア・カリを作成することが目的であることから、各学会に原案を依頼すると量的増大が懸念されたため、別の方法を採った。まず、補綴であれば補綴の専門家に原案を作ってもらい、できあがったものから補綴の専門家を除いたメンバーが学部教育内容にふさわしいものを選び、さらにこれを補綴の専門家に確認してもらうというやり方を用いた。各学会からの反発等もあったが、全歯科大学・歯学部の多大なるご協力により、当初10年はかかると言われた「コア・カリ」(試案)が、わずか1年足らずの間に作成されたのである。

 共用試験については、2001年4月から2002年3月までの間に、全参加大学による全体会議が4回開催され、研究班を中心に共用試験システムへの参加の意向確認と試験内容や実施方法などについて検討が行われ、第1回トライアルは、CBTは2002年2~7月、OSCEは2002年1~6月に実施され、第1回正式実施(2006年度共用試験)は、2005年12月からであった。共用試験の問題を作成しシステムを作ることは大変な困難であった。これを成しえたのは委員の先生方、ならびに各大学において作問や試験の実施をされた先生方のおかげである。改めてご協力いただいた先生方に厚く御礼を申し上げたい。

 21世紀医学・医療懇談会第4次報告に始まるこの改革は、「報告を報告書で終わらせるべきではない、報告書は改革の始まりとするべきである」という文部科学省医学教育課の強い意志と指導力で実行されたのである。コア・カリ作成と共用試験は当初、医学のみでスタートする予定であったが、歯学も同時スタートできたことは、今になってみると幸いであった。そしてこの改革の後押しとなったのが、当時の医療事故の多発である。これらの事故の背景として医学教育はどうなっているのかという社会的声が起こり、これが国を動かし予算化されて改革が進んだという側面もあった。

 医学・歯学教育が職能教育の側面を強く有することから、教育内容の標準化のためのコア・カリと共用試験は必要である。しかしながらコア・カリと共用試験によって「学生の考え方の画一化を進めているのではないか」「同じように考えさせるための鋳型にはめて、自由に考える活力を奪ってしまっているのではないか」について常に内省すべきである。大学とは、知の創造の場でなくてはならない。学生の研究心の育成にも目を向け、優れた医療人を育てるための教育システムの構築に尽くしていく所存ですので、今後ともご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。

副理事長  齋藤 宣彦click

 医療系大学間共用試験実施評価機構の副理事長を仰せつかっております齋藤宣彦と申します。私は、長く医科大学の内科学講座を担当していた内科医ですが、日本医学教育学会の責任ある立場にもいた関係で、“医学教育モデル・コア・カリキュラム”の策定や医師臨床研修必修化等、わが国の医療人養成にも末席で関わる機会がありました。その流れで、本機構の副理事長の椅子を汚しております。

 本機構では、事業担当、ほとんどが医学系のCBTとOSCEの実施に関することで、CBTの実施、OSCEの課題作成、実施、評価者養成、模擬患者養成、共用試験全体の合格基準設定など、それぞれの委員会の活動を拝見しています。昨今の各大学から寄せられる多くの質問内容を解析すると、それぞれの大学が、限られた人員や資源で、共用試験の実施に向けて多大な努力をされていることが見て取れます。これは、医学系82大学がいかに良医の育成に力を注がれているかの表れで、この事実を、どうしたら国民に伝えられるだろうかと考え続けています。

 さて、医学生は、基礎医学、社会医学、臨床医学など、多くのことを学修しなければなりません。それは、将来、医師として、患者さんの考えや生活基盤のみならず、病態解析や、治療法の選択、さらには発症予防までを考え、かつ研究的思考ができる医師になるためです。

 その目標に到達するためには、医学生のうちから、実際の患者さんに接し、話を伺い、身体を診察し、検査や治療の手技を行いながら学修する「実習」が不可欠です。この実習を「診療参加型臨床実習」といい、国際的にも医師養成課程での有用な学修方法と位置づけられています。しかし、わが国では、医師ではないものが診療行為をすることはよろしくないとされてきました。そこで、臨床実習前の医学生の能力を厳しく評価し、それに合格した者には、診療行為を伴う実習を許容する制度をつくろうということになり、わが国の全医学部・医科大学が一つの団体を作り、「共用試験」という名のもとに、コンピュータ画面上で出題する知識の試験(CBT)と、知識に基づいた技能や態度を、シミュレータ等を用いて評価する試験(OSCE)の2種類を実施することにしました。このようにして17年が経ち、令和3年5月の国会で医師法が改正され、この試験を国の公的な試験と位置づけ、令和5年度からは、これに合格した医学生は、診療参加型臨床実習ができるようになりました。これでやっとわが国も医師養成の先進国の仲間入りができたと言えます。

 医学生の諸君は、臨床実習開始までに、教科書や講義による学修のみならず、言葉遣いや身なりに注意を払い、真摯な態度で患者さんからお話を伺う習慣を身につけてください。患者さんとの信頼関係が構築できなければ、患者さんの考えや診断のための情報を収集することは不可能です。

 次に、全身を精緻に診察する技能を修得してください。診療参加型臨床実習前の共用のOSCEで、医療面接と身体診察の能力が評価されるのは、それが臨床医の基本だからです。

 診療参加型臨床実習が始まったら、卒業後、臨床研修医として活動するために、病態の解析、鑑別診断、臨床検査計画の立案と検査結果や画像の判読、治療計画の立案、診療録記載、文献検索など、医師が日常診療で行っていることの修得に努めてください。

 このホームページをご覧になっている一般の方々に申し上げます。医学生を一人前の医師に育てるために、大学医学部の教員や病院の医師をはじめ、すべての職種の医療スタッフが、毎日熱心に取り組んでいます。しかし、臨床実習では患者さんや地域住民の方々のご協力が不可欠です。皆様には、将来の良医を育成する重要なメンバーのおひとりとして、ご協力賜りますようお願いいたします。